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はじめに 「国際青年育成交流事業」は、皇太子殿下のご成婚を記念して平成6年(1994年)から開始されました。本事業は日本青年を海外に派遣する「青年海外派遣」と、外国青年を日本に招聘する「外国青年招聘」で構成され、平成21年度はカンボジア、ドミニカ共和国、ラオス、ラトビアの4か国の交流が行われました。 2.
カンボジア派遣団スローガン 私は縁がありまして、平成21年度カンボジア派遣団団長として、副団長のほか8人の大学生、2人の社会人らと一緒に貴重な体験をしてきました。 There are smiles. There are dreams. ~Our Dreams for
Cambodia~ 3.
精力善用、自他共栄 私は、講道館柔道の創始者嘉納治五郎師範の哲学を、今後の人生の糧になると思い団員に教えました。 日本人としての矜持を自覚し、今回のカンボジア派遣だけでなく、今後の人生に役立ってほしいと思い、団員たちに私の想いを伝えた。 4.
カンボジア訪問 9月5日、夜遅いにもかかわらず、我々を出迎えてくれた7月に日本で研修をしたカンボジア青年たちとの再会を、笑顔で喜び合う熱烈歓迎であった。 いよいよ明日から活動が始まる。 ① 国際交流 国立幼稚園養成学校での「よさこいソーラン節」の披露、王立プノンペン大学外国語学部の学生たちとの意見交換会、カンボジア・スカウト連盟との交流を重ねた。この時期は、カンボジアのプチュム・バン(盂蘭盆)であったので、ゆったりとした盆踊りを一緒に踊ったりして、交流を深めた。 ② 日本人としての矜持 カンボジアで活躍しておられる日本人の事業を見学した。カンボジア人の目線で仕事をし、上からの援助ではなく共に物事を作っていこうという姿勢が共通していた。 近い将来はカンボジア人が、自分たちの手で産業を興し、外国からの援助に頼らない「国づくり・人づくり」ができるようにしていきたいという強い気持ちを感じた。 プノンペンのスラムは、ごみ山の近くに700か所もあり、悪臭が漂い、ごみの浮いた湿地帯に家屋があり、そこで生活をしている。 その一角に屋外教室があり、数十名の0歳児から小学5~6年生の子どもたちが集まり、移動図書館が週に二回巡回して、紙芝居や物語を聞いたりしたあと、自由に読書をする時間をとっている。この活動は、若い日本人の曹洞宗の僧たちが自然発生的に始めた。その後学生たちやボランティア活動のスタッフたちが集まってできた組織で、社団法人シャンティ国際ボランティア会である。 JICAカンボジア事務所の青年海外協力隊の活動現場を見学した。キノコ栽培を指導しているタケオ州の田園風景は、古き良き時代の日本の農家である。庭には鶏が放し飼いされ、牛が床下でつながれ、豚が庭の隅に囲われた柵の中で飼育されている。 数軒の農家がある村を訪問、帰り際にそこに住むおばあちゃんに呼び止められ、家の中を見学させてもらった。高床式の家屋の中に大型テレビが設置してあった。そのおばあちゃんが庭にいた若者に指示して、ヤシの木に登らせてヤシの実を十数個落として、その場でヤシの実の頭を割ってジュースを飲ませてくれた。暑い気候のなかだったので、とても美味しかった。周りにいた農家の人々の笑顔が優しい。素晴らしいホスピタリティーであった。 また、青年海外協力隊の活動は地味な努力の積み重ねである。学校の建設、絶対的に不足している教師の育成、教師のスタディーツアーを実施している。カンボジアが好きで、カンボジアの人々が成長してゆく様子がたまらなくうれしいといった人たちが、青年海外協力隊の隊員たちである。 ③ 戦争と平和 小雨の降りしきるなか「トウール・スレン博物館」を見学した。ポルポト支配下での激しい拷問と処刑の舞台。1976年クメール・ルージュが「革命に学問は不必要」という理由で医者、弁護士、教師などの知識人をはじめ罪のない人々を次々に捕まえ、当時無人だったリセ(学校)を尋問・拷問する場所に転用された。160万人虐殺。一説には200万人以上も虐殺された。 ガイドのブッティさんのお父さんもポルポトの内戦で虐殺された。このように身近な人、家族のなかに虐殺された人が多いとのこと。原始共産主義で反政府運動のため、何も知らない子どもたちを洗脳し、スパイとして使い、働き盛りの人々、教育者、知識層にターゲットを絞って、トウール・スレン収容所に強制収容して、拷問、磔、水責めをした。手足を縛った鎖、拷問したベッド、床には染みついた血痕、犠牲者たちの写真、生々しい悲惨な光景の写真パネルが、たくさん展示されている。 人命の尊さ、人が人を殺しあう無意味さ、そして平和のありがたみを感じた。 さらに、この虐殺のため、圧倒的に教師が少なくなった。教育のレベルアップに時間がかかること。教師の育成が急務であることも知った。 ④ 環境問題 Youth
Empowerment for Social Development 「若者の社会参加」をテーマに「環境」「教育」「文化」3グループに分かれ、現地調査を行った。 私とカンボジアの学生二人は環境問題を取り上げた。プノンペン郊外の水量豊かな川辺の保養地を訪れた。家族連れでピクニックなど出来るスポットである。しかし、近年、環境破壊で行楽の場所にふさわしくなくなってきている。環境破壊の大きな原因は河川の汚染、生活用水が流出されていること、ゴミのポイ捨てなどがあげられる。静かな保養地が人気となり、たくさんの人々が自動車でこの村に乗り入れ、その排気ガスや騒音、観光客の歓声が響きなどで、従来から都会から引っ越して郊外での生活を楽しもうとしていた地元の人々が、生活しづらくなってきたと嘆いていた。 我々は、約一時間カヌーに乗って、川下りをした。舟着き場の周辺には布団が捨てられ、生活ゴミがうず高く積まれている。川に出るとペットボトルや弁当の空き箱が浮かんでいる。ゴミ箱すらない。 高床式の休憩所のベランダでは家族連れが、続々訪れてきてランチを楽しんでいる。ポイ捨ての現場を何回か目撃した。 半日の現地視察後、それぞれのグループデスカッションを行い、その結果を大きな紙にまとめて、発表した。 まず、環境破壊をしているとの認識が低いこと。政府や業者が環境問題を考慮せずに、乱開発していること。 今後この地を、昔のような緑あふれた、きれいな水が流れる地に ⑤ 修復現場 アンコールワットをはじめとしたアンコール遺跡群とそれらの修復現場を見学し、それに携わる日本人関係者のお話を聞き、アンコール遺跡群が「修復のオリンピック会場」とも呼ばれたくさんの国々が修復を支援していることを知った。 アンコール遺跡群はカンボジア人にとっての誇りであり、日本が上から行う支援ではなく、カンボジアの人々が中心になって一緒に修復作業を行っている。 「カンボジアは現在、手取り・足取り、他の国に丸抱えにされている状態である。」人材育成、インフラ整備、法の整備等々、カンボジアがさらなる発展を遂げるために、自分達の国は自分達の力で変えていく意識をもつことが重要であることをこのアンコール遺跡群修復現場で感じ取った。 5. おわりに カンボジア派遣団の目標としていた「Y字型」人間、つまり「幅広い知識の吸収と専門分野をより深く探求すること」を実現でき、団員それぞれが持っている能力を遺憾なく発揮できたことが、団長として無上の喜びであり誇りであります。 この報告書を見て、内閣府青年国際交流事業に興味を持った人が現れることを期待しています。学生、社会人そしてシニア世代に展望はひらいております。 内閣府政策統括官(共生社会政策担当) |
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